訪問美容をナメていた……創業3か月目、営業初月の売上は3,240円。

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3,240円。

これは、私たち夫婦が訪問美容業を始めて最初の1か月間の、丸ごとの売上です。

今でこそ、月商75万円〜103万円の間を推移するようになりましたが、この数字にたどり着くまでに、私たちは一度、完全に打ちのめされています。今日は、その話をしようと思います。

目次

「すんなり行くだろう」と高をくくっていた

2017年6月、私たちは訪問美容業を創業しました。

当初の計画では、美容師である妻が一人で訪問美容を担当する予定でした。私(夫)はあくまで手伝い程度のつもりで、創業直後にようやく付き添うようになった、というくらいの立ち位置です。

今思えば、ここに最大の甘さがありました。

「訪問美容」という言葉は、当時少しずつ世の中に知られ始めていました。だから、美容師としての技術さえあれば、需要はあとからついてくるだろう。介護の知識も、営業のノウハウも、走りながら身につければいい。そんな風に、どこかで高をくくっていたのだと思います。

ふたを開ければ、毎日閑古鳥

しかし、現実はそう甘くありませんでした。

営業先は、手あたり次第に見つけた老人ホームらしき施設。今思えば、ずいぶん恥ずかしいやり方だったと思います(このあたりの営業活動の詳しい話は、また別の記事で書くつもりです)。

何度も同じ施設に足を運びました。それでも、反応はありません。毎日、閑古鳥が鳴いているような感覚でした。

予約用に用意していた携帯電話が、ある日ふと不安になりました。「もしかして壊れているんじゃないか」と。確かめるために、自分の携帯からその番号にかけたこともあります。今思えば異常なくらい、怯えながら毎日を過ごしていました。

転機になった、たった一本の電話

そんな中、2017年7月、あるグループホームから初めての依頼をいただきました。

お一人1,620円のカット×お二人分。その日の売上は、3,240円でした。

そして、それがそのまま、2017年7月の1か月まるごとの売上でした。

訪問美容をナメていたのは、私たち自身だった

訪問美容をナメていたのは、他でもない、私たち自身でした。

技術があれば大丈夫だろうという思い込み、介護の知識も営業の地道さも軽視していた甘さ。それを、この3,240円という数字が静かに突きつけてきたのだと思います。

それでも、この一件が妻の中で何かを決めるきっかけになったのだと思います。それから4か月後の2017年11月、妻は当時勤めていた美容室を辞める決意をしました。

少しずつ、本気で向き合うようになっていった

この出来事をきっかけに、私たち夫婦は少しずつ、本気で訪問美容に向き合うようになっていきました。

妻は「NPO法人日本理美容福祉協会認定福祉理美容師」の資格を取得。さらに夫婦そろって「介護職員初任者研修」と「認知症介助士」の研修も受けることにしました。

それまでの私たちには、介護に関する知識がほとんどありませんでした。技術さえあれば通用すると思っていた自分たちを、少しずつ作り変えていく時期だったと思います。

あれから約10年、月商75万円〜103万円になるまで

そこから今の月商75万円〜103万円に至るまで、正直に言えば、簡単な道のりではありませんでした。積み重ねてきた努力の中身は、また別の機会に書かせてください。

その途中で見てきた、「辞めていく人たち」

この10年近くの間、気軽に訪問美容を始めた個人や業者が、次々と辞めていく様子を、何度も目の当たりにしてきました。

「気軽に始めないでほしい」という、本音

今、心底思うことがあります。それは「気軽に訪問美容を始めないでほしい」ということです。

これは、始める美容師自身だけの問題ではありません。その先には、本当に訪問美容を必要としているご利用者様がいます。仕事として成り立たせることができずに辞めていくということは、その方たちにも大きな心的負担をかけてしまうことになるのです。

必要としてくださっている方がいるにもかかわらず、事業として続けられずに去っていく。この不条理こそが、訪問美容という仕事の「悪」なのではないかと、私たち夫婦は感じることさえあります。

それでも、続けることができれば

逆に、続けることができれば。それは、どれだけ多くのご利用者様の人生に関わり、お役に立てることか。

10年近くこの仕事を続けてきた今、伝えたい気持ちがここにあります。

次回予告

あの初めての依頼の日、私の記憶に強く残っているのは、3,240円という数字そのものではありません。

それは「私たちは今、命の現場を預かっているんだ」という感覚でした。

次回は、その感覚がどこから来たのか、あの初仕事の日のことを、もう少し詳しく書いていこうと思います。

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