「命の現場を預かっている」と感じた、初仕事の日のこと

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前回、2017年7月にいただいた初めての依頼、売上3,240円の話を書きました。
今日はその続きです。

あの日、私の記憶に強く残っているのは、数字そのものではありませんでした。
「私たちは今、命の現場を預かっているんだ」という感覚でした。

今日は、その感覚がどこから来たのか、あの頃の出来事を書いていこうと思います。

目次

あの日の施設

初めての依頼をいただいたのは、開所して間もない、小規模な認知症グループホームでした。

入居者の方々は、やや徘徊されている状態でした。
でも、職員さんも含めて皆さんとても穏やかで、ゆっくりとした時間が流れているような印象を持ったことを覚えています。
建物もまだ新しく、木の香りが心地よい空間でした。

カットをする場所さえ、まだ決まっていませんでした。
ご利用いただいたお二人は、男性の方と女性の方。
お二人とも足元にふらつきがあったため、お部屋の前の廊下に養生シートを敷いて、そこでカットさせていただいたのを覚えています。

「支える」ということの重み

足元が不安定な方の施術に付き添うと、少しの移動そのものにリスクが伴っていることに気づかされます。
転倒すれば、それだけで大きな怪我につながりかねません。

私たち夫婦にとって、この「支える」という役割の重みを、実感として持ち始めたのは、この頃だったと思います。

けれど、本当の意味で「命の現場を預かっている」という感覚を強く持つことになったのは、この初仕事の日ではありませんでした。
後日、同じ施設で出会った、もう一つの現場でのことでした。

後日、同じ施設で出会った、もう一つの現場

その日は、高齢の女性の方を、ベッドの上で、寝たままの状態でカットさせていただきました。

職員さんが2〜3人、順番に付き添ってくださっている状態でした。
「最期をキレイにしておきたい」というご本人の意思により、急遽依頼をいただいたのだと聞きました。
下顎呼吸も、少し見られる状態でした。

職員さんも付きっきりの、万全の体制の中でのカットでした。

その後の報告

後日、施設の方から報告を受けました。
「あれから2時間後に、安らかにお亡くなりになりました」と。

正直に言えば、この報告を聞いたとき、恐怖を感じたのは事実です。
しかし同時に、それまで自分の中になかった、使命感のようなものが芽生えたのも、また事実でした。

それから今も続いている、介助という仕事

あの日から今まで、私たち夫婦が大切にしていることがあります。
妻である美容師が安全に施術できるよう、ご利用者様の表情をよく観察しながら介助を続けることです。

私たちが担当させていただく方々の中には、言葉を発することができない方も少なくありません。
だからこそ、支えている箇所が痛くないか、苦しくないか。
表情や筋肉のこわばりから、常に読み取ろうとしています。

今でも緊張する瞬間があります。
それは「不随意運動」のように、本人の意思とは関係なく、突発的な動きが起こることです。
シザーなどの刃物を扱う仕事だからこそ、この瞬間には特に神経を使います。

「ベッドカット」という強み

私たちは、姿見を持ち込み、養生マットでカットスペースを作り、オルゴールの音楽をかけながら施術を行っています。
その空間を「まるで美容室みたい」と言っていただけることが、何度もありました。

「こんなに丁寧にしてもらってありがとう」
「これまでいろんな訪問美容を使ってきたけど、こんなに丁寧なところはなかった」

そう言っていただき、当時4社の訪問美容業者を使い分けていた施設から、私たち1社に任せていただけるようになったこともあります。
「お二人で来ていただけるからとても助かる」という言葉も、たくさんいただきました。

中でも、寝たままの状態でのカット。
私たちが「ベッドカット」と呼んでいる技術は、他の業者さんではなかなか手が届かない後頭部までしっかり整えることができます。
そのため「寝たままでもこんなにキレイに、こんなにオシャレに切れるんですね」と、評判をいただくようになりました。

もしかしたら、あの日の「最期のカット」が、今の私たちの仕事に活きているのかもしれません。

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